趙雲に惚れること間違い無し 映画「三国志」の見どころ勘どころ

趙雲に惚れること間違い無し 映画「三国志」の見どころ勘どころ

レッド・クリフPart2の大宣伝の影に隠れ、メディアに取り上げられる事が 少なかった映画です(泣)。アンディ・ラウ主演の趙雲一代記。ブルース・リー世代には懐かしいサモ・ハン・キンポーが準主役で出演、アクション監督も務めている。ワタシ的におすすめの映画です。


原題は「Three Kingdoms:Resurrection of Dragon」龍の復活

アンディー・ラウ主演のこの映画、運が悪いのかワザとなのかは不明だけど、レッド・クリフPart2の大宣伝の影に隠れ、ほとんどメディアでも取り上げられなかったという、可哀想な扱いを受けた作品です。でも、見た人はジョン・ウーよりこっちに軍配をあげているという、実は隠れた名作だったりします。
最初に言っておくと邦題に迷わされ、悪い印象を持った人が多くいたのでは、と少々懸念しているこの映画「三国志」。ここでこの映画の悪い印象を少しでも拭えると良いなと思ってます。
 主人公趙雲はアンディー・ラウ、その義兄平安をサモ・ハン・キンポー、敵役曹操の孫娘という役どころ曹嬰をマギー・Qという配役で、原題通り趙雲の外伝的話になってます。サモ・ハンとマギーのキャラですが、こんな人物いたっけと思ったあなた、その通り。この二人、実はこの映画のためのオリジナルキャラでした。
個人的にマギー演じる曹嬰の執拗で冷徹な悪役ぶりが徹底していて、わざわざ趙雲の為に作ったキャラだけに暴れてくれるわぁと気に入ってます。

邦題から内容を想像しちゃダメ、これは趙雲が主人公の外伝なの

原題にThree Kingdomsの後、Resurrection of Dragonとあるように、これは三国志の世界観から派生した趙雲が主人公の外伝なの。基本のストーリーや史実があって前提として「三国志演義」という世界観がすでにあり、その中で展開される二次創作に近いもの。見てみたいと思った人、邦題に囚われず、先入観無しで単純に楽しんでください。アンディーのアクションが、めちゃくちゃカッコイイから。デブなのにキレのいい動きのサモ・ハンも見応えあって、往年の香港映画を彷彿させます。
 趙雲が主人公だけど、蜀中心の映画じゃないです。趙雲のための趙雲の半生を描いた映画ですから、「三顧の礼」も「赤壁の戦い」も出てきません。というか、劉備(玄徳)も関羽も張飛も脇役で呉に至っては誰も出て来ない。ある意味、シンプルでかのレッド・クリフより話が分かりやすいかもしれません。

どんな内容かざっくりとご紹介

ダニエル・リー監督が大胆に「三国志」を改変し映画化、趙雲の20代から70代までの人生を描いています。飽くまで趙雲が主人公で彼のみに特化した話といっても良いくらい、他の英雄の影が薄いですよ~。映画始まって直ぐくらいで死んじゃう感じ。邦題「三国志」に踊らされ見た人は、こんなん三国志じゃねぇって文句言いた気持ちは良くわかります。確かに長い歴史書の「三国志」、2時間やそこらじゃ語れません。だからってわけじゃないですが、ナレーションで有名な戦いとか、誰それが死んだとか語るから歴史的事柄が抜けてます。ついでに史実も脚色され、張飛は討ち死にしてるし、主要人物の内2人は架空の人物ですからね、あまり気にずその辺はさらっと流してください。
 さてこの映画、若き趙雲が聖君劉備の軍へ入隊希望で面接するところから始まります。その時面接した同郷の平安を兄と慕い中華統一を狙う野心家曹操軍と戦う、というのが話の筋ですね。呉軍は出てきません。敵国は魏軍のみ。
 数々の戦の中で平安手柄を立て、劉備の妻子の護衛役を仰せつかるのですが、曹操軍に責められ鳳鳴山へ逃走した際、預かっていた妻子を見失い生け捕りにされるという失態を犯すんです。で、当然罪を問われた平安は粛正されそうになるんですが、そこは義兄を立てる趙雲、身を挺して義兄を守り、何するか! と襲ってきた関羽、張飛二人を相手に互角に立ち回るという暴れようで、平安の助命を取り付けちゃうんです。妻子救出が条件だけどね、まるでメロス。走れ趙雲、じゃないが単騎魏軍へ突っ込み趙雲は見事に阿斗を救出。この救出劇が前半の見せ場です。
 見事、任務完了で趙雲は五虎大将軍へ出世するも、義兄はそのまま。このあたりで二人の関係が微妙になるんだけど、趙雲は最後まで義兄を見捨てず、立ててます。
 その後一気に時代が進み、趙雲が助けた阿斗が帝位に就く頃には蜀は弱小国へ成り下がり、五虎将軍の内残された将軍は趙雲のみ。最後の北伐への作戦では、関羽の息子関興と張飛の息子張苞を将軍に立てられる始末で、亡き劉備への忠義を果たすというより死に場所を探していた趙雲としては納得がいかず、孔明に願い出るんですが。孔明がねぇ、冷酷な策を練るんですよ。そう、この趙雲の最後の戦いが後半、いえこの映画のクライマックスになります。思い出の地、「鳳鳴山」での魏軍との戦いです。

前半の見どころ

 前半の見どころは、鳳鳴山での妻子救出劇、趙雲といえばこれという外せない名場面です。これぞ香港映画。見せ場連続、息継ぐ暇もないアクションに継ぐアクション連続で、マジで手に汗握っちゃいます。むろん、アンディ趙雲は文句無しでカッコイイです。動きがきれい、無駄がない。計算されたアクションは見ていて本当に美しいです。ここはサモ・ハン、流石ですよ。このアクションシーンを見せるためか、場面は草原と言うか砂漠で、砂塵が良い演出効果を出してます。殺伐とした雰囲気で単騎で突入した趙雲の決死の覚悟が伝わってきます。ダニエル・リー版長坂ですよ。

ココでちょっと正史から

 三国志でも人気の趙雲。どの映画でも五虎将軍讃えられてますが、正史では5人中最も位が低い。劉備が漢中王として即位した際、関羽・黄忠・馬超・張飛が前後左右の将軍位を授かっているのに、趙雲の位は翊軍将軍のまま。この位は魏延よりも下ってちょっとショックですよね。

クライマックス 曹嬰に注目

この映画のクライマックスは鳳鳴山での曹嬰との戦い。実はこの戦い、三度目の北伐を計画した孔明の冷徹な作戦として描かれてます。北伐に関興と張苞が全勢力で向かっているわけで、趙雲のもとには副将の鄧芝以下の部隊のみで、10万の大都督曹嬰軍と戦います。死ぬのが分かっている戦いって、見ている方は胸が潰れそうですよ。趙雲の相手は大将騎馬、大都督軍なんだから。趙雲もここが死に場所と老体に鞭打って踏ん張るんだけど、待てど暮らせど援軍は来ない。来るわけないんですよ。だって、趙雲の軍は北伐の囮、本陣の奇襲作戦を成功させるために死ね、と言われているも当然なんだから。しかも身内に裏切り者が。迫ってくる魏軍大将曹嬰はその囮作戦を見抜いているという、徹底ぶり。彼女は幼い日、尊敬する祖父曹操に抜刀し、圧倒的強さを見せつけたた趙雲が許せないわけで、それ以来ずっと趙雲のことを考えて生きてきた。だから見ている内、ずっと趙雲を倒し捕縛することだけを考え生きてきたので、実は趙雲に惚れているのではと伺わせる演出もあったりして、個人的に曹嬰から目が離せませんでしたね。だから、わざわざ女性キャラにしたのかなと勘ぐってます。この辺りの複雑な女性心、分かりにくかなぁ。女性って、敵と思ってもずっとその人のことを考えていたら常に心に相手がいることになって、気づかないうちに惹かれてしまうというのはあり得るのですよ。嫌い嫌いも好きの内ってことで。そこまで考えて女性キャラを敵役にしたとしたら、ダニエル・リー、なかなかやるじゃんね。

ココでちょっと民間伝説から

清代の『江陵県志』より。
 関羽の子関平が趙雲の娘趙氏を娶り、関樾と言う子を成します。その後、親子は益州へ逃れ関羽の血を守ったそうです。関羽の血と趙雲の血ですけどね。なんだか、信長の血をお江を通じて徳川家へ継いだというのに似てますね。

そして終劇

曹嬰軍10万と対峙した趙雲軍。身内の裏切りに会い、味方がどんどん殺されていきます。クライマックス、終劇に向けて一気に加速ですよ。一太刀で切られる兵士から鮮血が飛び散ります。一瞬を切り取ったシーンが、キレイなんですね。スロー再生演出といい、香港映画ならではの美学が冴え渡ります。曹嬰の冷淡ぶりが発揮されるのもココ。忠義を利用し忠臣に死ねと言わんばかりの命令を下したり。曹嬰が趙雲を捉えようとさも嬉しそうに指揮を執る姿が妖艶ですよ。いたぶって遊んでいるようにも見れますから。
 最後に残った趙雲が陣太鼓を背に単騎で突っ込むシーンは涙なしには見れないです。私はこの映画で2回泣けました(T_T)。

 前半は長坂の戦いと若き趙雲の青春を、後半はこの曹嬰の動向に注目してみるとダニエル・リー版三国志を十分堪能できるはず。
 先入観は排除して、下手な史実も忘れてダニエル・リー版「三国志」お楽しみいただけると嬉しいです。

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