高潔を貫いた烈女。女武将・王異の壮絶な人生。

高潔を貫いた烈女。女武将・王異の壮絶な人生。

三国志には数多くの武将が登場しますが、その中で女性武将と言うのは殆ど存在していません。今回は、唯一正史の中に戦闘記録が残っている女武将、王異の壮絶な范成をご紹介します!


■唯一の女傑、王異

■唯一の女傑、王異

■唯一の女傑、王異

2017年現在、NHKで放送され大きな話題を呼んでいる大河ドラマ「おんな城主 直虎」。柴咲コウが演じる直虎は、女性でありながら男性として戦国の世を生きた、壮絶な女武将だったと言われています。
それでは、戦国時代と比較されることの多い三国志の時代にもそうして活躍した女武将がいるのかというと、実はほとんど存在していません。

というのも、三国志の時代は漢たちの時代。戦場に出て活躍するのも男性なら、政治を動かし謀を執り行うのももちろん男性たちでした。そもそも三国志の時代の中国は極端な男尊女卑が社会での一般でした。
つまり言い方は悪いですが、女性はあくまで夫のオマケという扱いしかされていなかったのです。

そのため史実には、女性の名前が残されていることすら稀で、そのほとんどは夫となる人物の章の中に、とってつけたように数行の記述がされている程度しかないのです。

もっとも、三国志演義へと目を向ければ、南蛮王孟獲の妻である祝融や、呂布と董卓を手玉にとって仲たがいさせた貂蝉、関羽の息子・関策と共に各地を歴戦した王桃・王悦姉妹など、女傑と呼ばれる人物がいないわけではありませんが、それはあくまで演義において創作された架空の人物の話。
正史三国志にはそうした女性の活躍というものはほとんど登場してこないのが現実です。

しかしそんな時代にあって、唯一自ら戦場に出て戦い、その智謀と武勇によって夫の窮地を見事に救ってみせた女武将がいました。

それが王異という人物です。

そんなわけで今回は、そんな唯一の女傑、王異の生涯をご紹介したいと思います。

■全ては愛する娘のために

■全ては愛する娘のために

■全ては愛する娘のために

王異は涼州漢陽郡を務めていた趙昂の妻で、後漢末期に記録が残る人物です。
そんな王異の波乱に満ちた生涯は、常に戦乱に巻き込まれた人生でした。

それは趙昂が羌道県令に就任したときのこと。
同郡にいた梁双が反乱を起こすと、王異たちが居を構える西城を攻め落とし、さらには王異の二人の息子をも惨殺してしまいました。

このまま生きて梁双軍に捕まれば酷い扱いを受けることは必至です。そうされることを望まなかった王異は、自ら命を絶とうと考えましたが、そのときそばにいた当時6歳だった娘を見て思いとどまります。

「私が死んでしまえば娘は一人ぼっちになってしまう……」
そして王異は娘のために生きる覚悟を決めます。

「かつて絶世の美女と言われた西施ですら、不潔な服を着れば誰もが鼻をつまむ。ましてや私は西施ではないのだからなおさらのこと」
そうして王異は糞尿を衣服にぬりつけ、食事を抜きやせ衰えた姿になることで梁双を欺き、娘ともども難を逃れたのだと言われています。

その後開放された王異は、夫趙昂の元へ帰る道中、娘にこう言ってきかせます。

「婦人たるもの正式な使者がなければ決して部屋から出てはなりません。それによって命を落とすことになろうとも、それが貞節というものです。私はこうして恥を偲んで生き延びましたが、それはひとえにお前が心配だったからです。このまま父の元へいけばもう安心です。私はここでお前と別れることにしましょう」

そうして王異は毒薬を飲み自害しようとしましたが、たまたま付近に解毒薬があったため、なんとか一命をとりとめたそうです。

娘のために恥を偲び、安全が確保されれば潔く死を選ぶ。
自らの命よりも名誉を守ろうとする、なんとも高潔な人柄が伺えます。

■馬超との因縁

■馬超との因縁

■馬超との因縁

王異の女武将としての活躍は、馬超との因縁と切り離せないものがありました。

それは趙昂が冀城に赴任していたときのこと。
劉備に仕える前の馬超は、当時は独立勢力として各地を転戦していました。そしてついに冀城までその侵攻の手を伸ばしてきたのです。

王異は夫の趙昂と共に弓籠手を身に付け、みずから戦場に立ち戦い、自身の財産を兵たちに分け与えて味方を鼓舞しつづけました。

また、長期にわたる包囲戦に城内が降伏論に傾きかけた際には、「救援が来ていないとどうして言えるのです。たとえここで死ぬことになろうとも、最期まで戦い抜いてこの地を守り抜くことが節義というものです」と趙昂を説得し、抗戦を唱えました。

しかしこうした説得もむなしく、趙昂が同僚たちに抗戦を説こうとする前に、刺史である韋康がすでに馬超へと和議を申し入れてしまっていました。

その後馬超の配下にさせられた趙昂たちは、叛旗を翻すタイミングを計っていました。

そこで王異は、馬超の妻である楊氏と親交を深め、見事に馬超からの信用を勝ち得ることに成功します。そしてその裏で、趙昂たちと虎視眈々と反撃の策を練っていたのです。

しかしここで問題になったのが、趙昂の嫡子である趙月が人質にとられていたことでした。もし反乱を起こせば趙月が殺されてしまうことは確実です。
息子の命を心配する趙昂に向かって、王異は言います。
「忠義のために生き、恥辱をそそぐためなら、自らの命など大したことではありません。まして一人の息子がなんだと言うのですか。何よりも大切なことは、義を尊ぶことなのです」

これによって趙昂は反乱を決意。尹奉たちと共に見事馬超を城内から追い出すことに成功したのです。

その後、再度馬超が攻め入ってきた際には祁山城に立てこもり、王異は再度趙昂とともに戦いました。結局30日後に魏の張コウが救援に訪れて馬超が撤退するまで、防衛し続けたのです。

その防衛戦の間、趙昂は九つの奇策を実行したそうですが、王異はその全てを補佐し、計略の成功に大きく寄与したのだと言います。

■まとめ

■まとめ

■まとめ

そんなわけで今回は、三国志正史で唯一の戦闘記録をもつ異例の女武将王異の、戦乱に翻弄され続けた壮絶な半生についてご紹介しました。
彼女は決して、望んで戦いに身を投じたわけではありません。それにこの時代の中国では、女性が戦場に立つなど、通常では許されないことでした。
それでも王異が自ら戦ったのは、大切な家族や、己の矜持を守り抜くためだったのです。

そんな王異の魅力は、なによりも高潔を貫いたことです。
夫や娘に語った内容は、まさしく王異の思想を表す言葉。
大義を守り続けて、自らの命よりも名誉を大切にし続けた姿勢は、現代に生きるわたしたちも学ぶことが多いのではないでしょうか。

男尊女卑が激しかった三国志の時代とは違い、現代は男女同権が叫ばれている時代。
男だから・女だからということに関わりなく、大切なものを守るためならばまさに命がけで戦う勇気を、わたしたちも持ちたいものですね。


この記事の三国志ライター

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