シンプルな漫画だからこそ
■ シンプルな漫画だからこそ
シンプルな漫画だからこそ
横山光輝氏の絵柄は今の時代の漫画家の絵と比べるとお世辞にも「物凄い上手」とは言い切れないものです。味があって好きだという人もいるでしょう。
ですが、それこそ顔だけでは誰が誰だか区別がつかないレベル。そこもまた、横山光輝三国志ファンにとっては良い部分でもあるのですが、シンプルな絵柄の漫画なので話により集中出来ます。更には漫画ですので話が分かりやすい点も挙げられるでしょう。
つまり、すんなりと三国志に入っていきやすいのです。極論ですが、それまで三国志のことを知らない人が読んでもある程度楽しめるのではないでしょうか。
最近増えている三国志を題材にしたアニメや漫画、ゲームの場合、ある程度三国志の知識を持っていないと楽しめない物も少なくありません。
知識がなくても楽しめる物、知識があると更に楽しめる物がありますが、横山光輝の三国志は、本人としても三国志マニアだけを相手にしているのではなく、三国志をよりいろいろな人に楽しんでもらいたいとの想いがあるでしょう。三国志に興味のない人にとっては強く興味を持たせるものではないのですが、初心者であっても読みやすい点が挙げられます。
基本的には三国志演義
■ 基本的には三国志演義
基本的には三国志演義
横山光輝三国志は、基本的に三国志演義を踏襲しています。つまり、蜀・劉備(玄徳)を中心に話が展開されていきます。もちろん決して劉備(玄徳)の話だけではなく、孫呉の話や三国鼎立前であれば様々な諸将の話が出てきますが、基本的には劉備(玄徳)を主役に、そして劉備(玄徳)亡き後は諸葛亮孔明を中心とした蜀を主役として扱っていますので、勧善懲悪とまでは言いませんが、対立機軸が明確なので作品を理解しやすい点が挙げられます。
正史の三国志はどちらが正義でどちらが悪だとかではなく、事実の羅列ですし、更に中国大陸はとても広いです。
様々な思惑が絡んでいますので、すべてを理解しようと思うと決して簡単ではありません。それだけに、初心者がいきなり正史を読んだとしても世界観そのものも分かり辛いでしょう。
ですが漫画なのですんなり読めるだけではなく、三国志演義がベースとなっているので物語の主軸も捉えやすいのです。横山光輝三国志のラストは姜維が諸葛亮孔明から授かった剣を降り、蜀の滅亡を嘆くシーンです。
つまり、読み終えた後、「蜀の話だったんだな」と誰もが分かるでしょう。昨今の漫画は話の複雑さが特徴で、小説さながらにじっくりと読み解かなければ分からないような展開や、中々噛み砕けないことも珍しくありません。
ですが横山光輝三国志は基本的に対立機軸等がしっかりしていますので、読み進めやすいのです。それだけに三国志のことが分からない人にとって「面白い漫画」として読めるのです。
今の漫画へのアンチテーゼ?
■ 今の漫画へのアンチテーゼ?
今の漫画へのアンチテーゼ?
先に少し触れましたが、今の時代の漫画は圧倒的な画力、そして様々な物が渦巻き、フラグがいくつも立っているストーリー。
気軽に楽しめるはずの漫画がいつしか「何となく読む」ではなく、真剣に読まなければならないものに変化を遂げました。漫画が好きな人にとっては好ましいことだと思いますが、息抜きとしてたまに読みたい程度の人にとっては複雑怪奇な漫画は読んでいて疲れるのではないでしょうか。
後々になって「あそこと繋がっていたのか」とか「ここの伏線だったのか」といったように、リフレッシュのための漫画のはずが頭を使い、仕事や勉強以上に疲れる…なんてケースもあるかもしれませんが、横山光輝三国志は絵柄だけではなく、ストーリー的にもシンプルです。
何重にも張り巡らされたフラグ、トラップ。これらはありません。シンプルに読んでいけば良いのです。
それだけに三国志のことが分からない人であっても問題なく楽しめるのです。まったく予備知識が無い人であっても何ら問題ないでしょう。
予備知識ゼロから三国志マニアへ
■ 予備知識ゼロから三国志マニアへ
予備知識ゼロから三国志マニアへ
横山光輝三国志は読みやすい漫画ですが、話は三国志演義を元にしていますので、60巻まで読破すれば、それなりの三国志マニアになれます。
そのため、三国志が好きな人が三国志を勧める時、「とりあえず横山光輝三国志」と挙げるのです。60巻まで読み終えれば、言い換えれば三国志演義を読破したと言っても良いのです。
蜀・劉備(玄徳)の話だけではなく、案外細かい部分までしっかりと描かれていますので、細かいエピソードにも付いていけるのです。
読みやすいだけに何度も繰り返し読むのも苦痛ではないでしょう。読めば読むほど内容も頭に入りやすいかと思いますが、それによってより三国志の世界を理解出来るのです。
それこそ横山光輝三国志を数回読み返すだけで立派な三国志マニアになれるといっても過言ではありません。
掘り下げるのは別の所になるから
■ 掘り下げるのは別の所になるから
掘り下げるのは別の所になるから
横山光輝三国志は基本的に三国志演義です。蜀に関してはそれなりにじっくりと描かれていますが、決して特定人物だけが主役なのではなく、あくまでも蜀全体です。
深く掘り下げている人物など劉備(玄徳)や諸葛亮、曹操、関羽、張飛、趙雲。精々この程度でしょうか。つまり、それ以外の武将たちはいわば「モブ」になっているのです。
そのため、三国志に興味が出てきた時、横山光輝三国志以外の三国志に触れなければならないのです。それが更に三国志に対しての興味を広げてくれるのです。
横山光輝三国志だけですべてが描かれているのであれば他の作品を読む必要はありません。
ですが、例えば孫策が好きになった場合、横山光輝三国志だけでは物足りないので自分で他の作品や文献を調べようとするでしょう。それらを繰り返していくうちに、三国志マニアへと成長していくのです。その点ではまさに「入門書」としての位置付けがぴったりな作品だと気付かされるのではないでしょうか。
まとめ
■ まとめ
まとめ
これらを考えると、横山光輝三国志が入門用としてぴったりなことが良く分かるのではないでしょうか。様々な知識を得た後に読めば再発見もあります。多くの人にとって三国志がバイブルとなっているのはそのためです。これから三国志を楽しみたい人や、全体の流れを把握したい人、より三国志の世界に浸かりたい人など、すべての人にオススメ出来るのが横山光輝三国志なのです。