赤壁に潰える野望
■ 赤壁に潰える野望
赤壁に潰える野望
さて、3巻をご紹介していきます。3巻は赤壁の戦いから五丈原の戦いにおける諸葛亮の死までを描きます。史実でいうと、208年から234年までです。
孔明の矢狩り
■ 孔明の矢狩り
孔明の矢狩り
周瑜、「ヒマなら矢を用意つくっとってもらえんかなァ」と孔明に絡みます。孔明は「私がヒマに見えますか?」とか言いつつ、盆栽をいじったりジグソーパズルをしたりしています。
このあたり、話そのものは普通に赤壁ですが、周瑜と魯粛と孔明がひたすらギャグの掛け合いをやっています。呉は大阪気質になっているので、ボケられるとツッコミを入れずにいられない人たちなのです。
とはいえ話自体は順当に、孔明が舟を仕立てて魏軍を欺き、矢を射るだけ射させて、舟に刺さった矢を回収して帰ってきます。その後黄蓋と周瑜による茶番シーンがありますが、こちらもおおむね原作通り進むので、話を進めます。
曹操の逃走
■ 曹操の逃走
曹操の逃走
赤壁の戦いです。なお、龐統が在野の賢人として登場し、孔明の意を受け、曹操を罠にかける手伝いをします。火刑にはめられた魏軍は惨敗、曹操が次々と襲い来る呉や劉備(玄徳)軍の武将たちに追いまくられ、散々な目に遭って敗走していきます。
追っ手のトリを飾るのは関羽。結局、関羽は曹操と、ついでに友人でもある張遼を見逃すことになり、いいとこなしです。なお、張遼は2巻で関羽が曹操の元を去るのを手伝った時に関羽から「戦場で手加減してもらう券」というのを貰っていたのですが、きっちりそれを提示していきます。
桃園の誓いの果て
■ 桃園の誓いの果て
桃園の誓いの果て
この漫画ではどこにカリスマがあるんだか分からない描き方をされている劉備(玄徳)ですが、原作がそうなっているのだから仕方ありせん、自分の主君や曹操や孫権などに愛想を尽かした人々が次々に、劉備(玄徳)のもとに参集します。中でも重要なのは、軍師・龐統と、そして劉璋の重臣である張松。龐統はただの中年男ですが、張松はなぜか河童です。何か理由があってのことなのかもしれませんが、昔の漫画のこととて、よく分かりません。
蜀獲りと関羽の死
■ 蜀獲りと関羽の死
蜀獲りと関羽の死
たいがいの創作においてそうであるように、劉璋は物凄い無能です。一応、戦争になりますが、最後は劉備(玄徳)の部下になっていた馬超が降伏勧告に赴き、劉璋を池に蹴落として、蜀を降伏させます。
こうして、ついに劉備(玄徳)は一国の主となりました。劉禅の母となっている蓉も一緒です。ちなみに貂蝉もまだいます。年齢などの問題については、突っ込んだら負けでしょう。
そして、よく知られているように、荊州を守っていた関羽が、呉と魏の挟撃を受けて孤立した末捕虜となり、死にます。この漫画では、最後は「舌を噛み切って自害」となっています。享年58歳。
……なんですが、死んだ後も幽霊になって、当たり前のように登場し、呉の人間を呪ったり、人に乗り移って操ったり、やりたい放題です。夷陵の戦いについても、孔明が反対するのを関羽の亡霊が強引に唆して、開戦に追い込んでしまいます。
張飛の死、劉備の死
■ 張飛の死、劉備の死
張飛の死、劉備の死
関羽の死後、まもなく後を追うように張飛もぽっと出の部下に殺されます。ちなみに張飛も幽霊化します。その後、夷陵の戦いが始まり、蜀ははじめのうち優勢に戦いを進めるのですが……
蜀軍の布陣を見て、孔明は簡潔に一言、言い放ちます。「蜀は滅びます」と。
で、大負けに負けた劉備は、呉の名将・甘寧に追われます。しかしそこで、カッコいいんだかダメなんだか分からない大見得を切ります。
「俺をそう簡単に殺れるか?俺ははっきし行ってすんごく負け慣れてる 逃げることなら大陸一だぜ つかまえてみろ」。この漫画の中では有名な名台詞の一つです。
かろうじて蜀に逃げ帰った劉備(玄徳)ですが、病に倒れ、孔明に看取られます。死の床で、こう尋ねます。「孔明 ひとつだけ聞かせてくれ なんで俺なんかについてきてくれたんだ?」「僕は武力もないし戦略もヘタだ 王になれる資格なんてもともとなかった 孔明も関羽も張飛も 僕以外の主君についてたらとっくに天下を取れてたかもしれないのに」。
如何でしょうか。この漫画が微妙に味わい深いのは、こうしたシーンがさりげなく挿入されてくるというところにあるのです。
孔明五丈原に散る
■ 孔明五丈原に散る
孔明五丈原に散る
ちなみに孔明は、劉備(玄徳)との別れに際し、あなたみたいなお人よしと国を作ってみたかった、と語っています。
曹操も既に亡く、主だったキャラクターはだいたい死んでしまいましたので、ここから先は孔明が実質的に主役となります。といっても、この先の話はかなり駆け足で進んでいくことになるのですが。
司馬懿の登場
■ 司馬懿の登場
司馬懿の登場
さて、史実の話はともかく、『三国志演義』などでは孔明のライバルとしてお馴染みの、司馬懿仲達が登場し、以後主要な助演キャラクターとなります。
孔明はボンクラな君主である劉禅に「出師の表」を提出、魏に対する侵攻、いわゆる「北伐」を開始します。しかし、自分の弟子である馬謖が大ポカをして、司馬懿の前に大敗を喫します。
相変わらず顔に落書きをされたままの孔明ですが、やることはちゃんとやります。泣いて馬謖を斬る、というやつです。馬謖は処刑されました。めぼしい人材がだいぶ減ってしまった後、魏延が蜀の武将の中では中心的存在となりますが、孔明とは仲が悪いのであまり言うことを聞きません。
死せる孔明、生ける仲達を走らす
■ 死せる孔明、生ける仲達を走らす
死せる孔明、生ける仲達を走らす
司馬懿は孔明の危険性を理解しているため、蜀との全面対決を望まず、国力の差を武器とした持久戦に持ち込みます。孔明も年を取り、そろそろ体力の限界。衰えた肉体をおして、6回目の、そして最後の北伐に臨みます。
そして孔明は五丈原の地で命果て、死後の遺命で、人形を自分に見せかけ、司馬懿を撤退に追い込みます。その光景を、劉備(玄徳)、関羽、張飛らの亡霊が眺めています。「これで司馬懿の天下だな」などと話を交わしつつ、やがて曹操や孫権の亡霊も現れて、丁々発止とやりながら、物語は終結します。
実際に読んでみるには?
■ 実際に読んでみるには?
実際に読んでみるには?
さて、ご紹介しました『SWEET三国志』ですが、一番最初にご説明しました通り、複数回単行本化されています。オリジナル版は全5巻、講談社からヤングマガジンコミックスとして刊行されました。これが絶版となり、のちにメディアファクトリー版が刊行されます。
古本でよければどれでもセット売りで入手することはできますが、現在、新品で手に入るのは、再び講談社から刊行された「講談社プラチナコミックス」のものしかないようです。
ですがこれはコンビニコミックスのレーベルです。少なくともわざわざ新品で買いたいという読者向けの、コレクター的な用途には適さないでしょう。
あとは電子書籍版ですが、Kindleからは出ていないものの、Renta!、BookLiveの2サイトには置かれているようです。とりあえず読む、という用途でしたら、こちらが一番早いかもしれません。