三国志お笑いネタ(1)

三国志お笑いネタ(1)

魏・呉・蜀がそれぞれ滅亡してから約1000年後。「三国志」の娯楽化が進むことで、まさかの三国志を題材にした漫談や喜劇が生まれました。本記事では、三国志をテーマにしたお笑いネタをご紹介します。


まえがき

「三国志」は本来歴史書として書かれたものですが、識字率が低かった当時は講談、演劇、影芝居、民話など読み書きができなくても物語が理解できるような形で、大衆に広まりました。
時代が進むと講談師の人口、演じる劇団の数も劇的に増加しました。これにより、講談の台本作家や演劇の脚本家という職業ができました。これをビジネスチャンスとばかりに書房(本屋さん)や飯店、茶屋は講談師、劇団とビジネスパートナーとなって場所を貸す代わりに台本・脚本を書房が商品として販売する。劇場の隅に屋台をつくり、飲食物を販売するというビジネスができました。

その激しい競争の中で、作家・脚本家が常に頭を抱えていたのが、いかに集客し、リピーターが飽きないストーリーを作れるかということでした。その中で、一味違った「三国志」として誕生したのが、これから書かせてもらう三国志のお笑いネタです。

劉備(玄徳)の戯れ

侍従 「丞相~丞相~」

今日も天才軍師・諸葛亮は朝から大忙し。朝議前にも関わらず、侍従のひとりが諸葛亮を呼んでいます。侍従は小走りで諸葛亮の執務室に飛び込んできました。

諸葛亮 「なに?」
侍従  「丞相…丞相っ!!」
諸葛亮 「だから!!なんなの?」
侍従  「早く政務殿にお越しください」
諸葛亮 「…!?、朝議まではまだ時間があると思うんだけど…開始が早まったのかい?」
侍従  「違いますけど…大変なんです」
諸葛亮 「なにか大事かな?」
侍従  「別にそういう訳ではないのですが…主君(劉備)がっ…とにかく来てください!!」

(まさか!?劉備(玄徳)の身に何か起きたのでは!?)
そう思った諸葛亮は政務を取り仕切る政務殿へ急行しました。現場へ諸葛亮が駆けつけると、既に集合し始めていた文官や武官が「フーッ」と息を吐き、胸を撫で下ろしていました。すると、人だかりの中心から
「どう?」
「わし…綺麗?」
と劉備(玄徳)の声が聞こえてきました。
劉備(玄徳)は身長が約190cm近くある大男なので、群衆に紛れても頭がヒョコっと見えてしまいます。しかし、紛れもなく目につく頭は自分の君主の頭のはずなのに、ジャラジャラとした髪飾りが見えていました。
(見間違いか!?)
諸葛亮は目を擦って注目してみましたが、やはり劉備(玄徳)らしき人の頭部には確かに若い女性が身に着ける髪飾りがついています。

人だかりをかき分けて、諸葛亮がズンズン突き進むとレディースの着物を羽織って身体をクネクネさせ、髪飾りを挿した劉備(玄徳)が立っていました。しかも何気に顔に化粧まで施しています。劉備(玄徳)は明らかに女装していたのです。

想像してみてください。
先ほども書いたとおり、劉備(玄徳)は長身かつ筋骨隆々の巨漢です。しかも、この時すでに60歳に差し迫る年齢なので、定年間際のおじさんがセーラー服を着て、巻き髪を自慢しているようなものです。

開いた口がふさがらない諸葛亮に対して無神経にも

劉備(玄徳) 「おお…!!孔明、どう?似合う??」

と意見を求めてきました。これには、さすがの諸葛亮も堪忍袋の緒が切れました。

諸葛亮 「いい年したオッサンが何してんだ!!、小娘のようにキャピキャピしやがって、見苦し
     い!!」

諸葛亮の意見はごもっとも。その場にいる是認の意見を代弁したようなものでした。すると、劉備が魚が死んだような目をして

劉備(玄徳) 「いい年こいたオッサンが…までは反論しようと思ったが、見苦しいと言われて目が覚めた
    よ。孔明がそこまで怒るなら、もうやらない…」

そう言って、何事もなかったかのように朝議が開始されました。

供養の恩返し

ある日、とある田舎に住む独身男性が食料を採りに山へ入りました。山にはキノコや木の実、山菜がありました。男が夢中で収穫していると、地面に頭蓋骨が落ちているのを見つけました。「わぁっ!!」と驚き、尻餅をついたら、そこにも人骨らしい骨の一部がありました。

注意して見ると、おそらく動物や鳥が食べたのでしょう。あちらにもこちらにも人骨がバラバラに点在していました。
(かわいそうに…よし決めた!!これも何かの縁だ。俺が供養してやろう)
ということで、その男は目についた人骨を拾い集め、穴を掘って埋葬。簡単な盛り土をして小さな墓を作って供養しました。

その晩、男の家の扉をトントンとノックする者が現れました。

男   「誰だい?」

家の中から男は声を掛けました。すると、

??? 「妃(フェイ)です」

と女性の声が聞こえました。
(そんな名前の知り合いいたっけ?)
首をかしげながら、男は玄関まで歩いて扉を開きました。
玄関には、まるで天女のように美しい女性が立っていました。そして、女性は男に一瞥すると、

女性  「夜分遅くに失礼します。私は楊。玄宗陛下の貴妃です」
男   「いやいや、冗談言わないでくださいよ。楊貴妃様は、私のじーさんが生まれる何年も前に
     お亡くなりになっていますよ」
女性  「あなたは昼間、人の骨を拾い集めて供養しませんでしたか?」
男   「なぜそれを知っているのですか?あの場には私一人しかいなかったのに!!」
女性  「ですから、その骨が私のものだったのです。私が自ら命を絶った後、罪人ということで遺
     体は山に捨てられました。動物や鳥がやってきてついばみ、遺体は朽ち果てました。何年
     もの間、私の骨は風雨にさらされ、誰も供養してくれませんでした。それなのに今日、あ
     なたが私の骨を拾い集めて供養してくださったおかげで、ようやく成仏することができま
     す」
男   「そうだったのですか。すみません。全部見つけることができなくて…」
楊貴妃 「いいえ、十分です。供養してくださりありがとうございます」
男   「あなたの言葉を信じましょう。しかし、貴妃様ほどの尊いお方が私に何のご用でしょう
     か?」
楊貴妃 「あなたにどうしてもお礼をしたかったので、神様にお願いして恩返しの機会を一晩だけ頂
     くことができました。しかし、お金も食べ物も持っていないので、私の身体を捧げます。
     朝には消えてしまうので、どうかあなたの好きにしてください」

絶世の美女にここまで言われてしまっては、男も断る道理もありません。
男と楊貴妃は情熱的な一夜をともに過ごしました。これを指をくわえて見ていたものがいます。隣の家に住む男です。
隣人の男は会話の内容を耳にしており、「すべて拾えなかった」という言葉を信じ、楊貴妃の遺骨を拾いに山へ入りました。しかし、なかなか見つけることができません。日も暮れて、そろそろ帰ろうかと思った矢先にようやく、人骨の一部を見つけました。
それを拾って穴を掘り、骨を埋めて供養しました。その晩ウキウキしながら目をギラつかせて待っていると、トントンと誰かが扉を叩いている音が聞こえました。

隣人  「妃(フェイ)かい?」
??? 「飛(フェイ)だ」

隣人の男は急いで玄関の扉を開けると、デーンとした太鼓腹が…
隣人  「え…?」
隣人の男が上を見上げると、ドングリのようにくりくりした目を光らせ、虎髭の大男が立っていました。

大男  「わしは燕人張飛。貴様が昼間わしの骨を拾ってくれたおかげで成仏できるわい。礼をしよ
     うと思ったのだが、いかんせん金も飯も持っていない。むしろ必要ないからな」
隣人  「…」
張飛  「楊とかいう小娘に聞いてみたら、一緒に寝たと言っていた。だから、今日はわしが貴様に
     添い寝してやる。遠慮するな」

その夜隣人の男は、張飛の太くて暑苦しい腕の中で眠れぬ夜を過ごしました。

あとがき

もちろん両方フィクションですが、劉備(玄徳)が女性用の髪飾りをつけてはしゃいでいたのは実話らしく、史実では、そのとき劉備を叱った(諫言した)人物は諸葛亮ではなく趙雲であるとされています。

1つ目のエピソードは喜劇。2つ目のエピソードは漫談のネタです。現在ではどちらも廃れてしまったそうですが、喜劇のイメージは時代劇風のコント、漫談は漫才よりも落語よりのバラエティだったそうです。

関連する投稿


油断大敵。英雄と言えども油断によって失敗した経験あり

油断大敵。英雄と言えども油断によって失敗した経験あり

戦場では気力が充実した者同士が戦い、策を講じ、運に左右されて勝敗が決まることばかりではありません。自らの緩み、怠慢が原因で「自滅」する場合もあります。「内から敗れる時が真の敗北」などとも言われますが、三国志の戦いの中で「油断」によって戦いの勝敗が決した場面を考えてみます。


三国志・この激突が見たい!仮想軍団最強対決!

三国志・この激突が見たい!仮想軍団最強対決!

星の数ほどいる三国志の英雄たちの中から10人ずつを選出して最強軍団を2チーム構成してみました。皆さんの予想とぜひ比較してみてください。


三国志・南蛮で最強は誰なのか!?トップ5を決定

三国志・南蛮で最強は誰なのか!?トップ5を決定

三国志の英雄・諸葛亮が颯爽と活躍するのが蜀の南征です。孟獲を筆頭として個性豊かな南蛮の武将が現れ、蜀軍を苦しめますが、諸葛亮の智謀によって敗北していきます。今回はそんな南蛮武将の中で最強は誰なのか選んでいきましょう。


三国志で活躍した女性たち 労いや養育の面で女性は長けている

三国志で活躍した女性たち 労いや養育の面で女性は長けている

戦場での攻防や過酷な行軍が取り沙汰されることの多い三国志。武将、文官など多くの男性が登場しますが、そんな男性たちに対し表となり裏となって活躍する女性の活躍も見逃せません。時の権力者の立場を一変させてしまうような場面もあるのです。


パズドラなど、三国志とは無関係のスマホゲームに登場した名将たち

パズドラなど、三国志とは無関係のスマホゲームに登場した名将たち

呂布をはじめとした武将たちは、三国志とは無関係のゲームに登場することがあります。パズドラなど知名度の高いアプリでは、どんなイベントが行われたのでしょうか?作品ごとの役割も知ることで、手に入れたくなるかもしれません。


最新の投稿


油断大敵。英雄と言えども油断によって失敗した経験あり

油断大敵。英雄と言えども油断によって失敗した経験あり

戦場では気力が充実した者同士が戦い、策を講じ、運に左右されて勝敗が決まることばかりではありません。自らの緩み、怠慢が原因で「自滅」する場合もあります。「内から敗れる時が真の敗北」などとも言われますが、三国志の戦いの中で「油断」によって戦いの勝敗が決した場面を考えてみます。


三国志・この激突が見たい!仮想軍団最強対決!

三国志・この激突が見たい!仮想軍団最強対決!

星の数ほどいる三国志の英雄たちの中から10人ずつを選出して最強軍団を2チーム構成してみました。皆さんの予想とぜひ比較してみてください。


三国志・南蛮で最強は誰なのか!?トップ5を決定

三国志・南蛮で最強は誰なのか!?トップ5を決定

三国志の英雄・諸葛亮が颯爽と活躍するのが蜀の南征です。孟獲を筆頭として個性豊かな南蛮の武将が現れ、蜀軍を苦しめますが、諸葛亮の智謀によって敗北していきます。今回はそんな南蛮武将の中で最強は誰なのか選んでいきましょう。


三国時代に隠れた「後漢皇族の氷河期」をちょっとラフにご紹介

三国時代に隠れた「後漢皇族の氷河期」をちょっとラフにご紹介

三国志は、後漢皇族のいい加減な政治によって始まったものです。しかし、その皇帝たちの出来事は陰に隠れがち。黄巾の乱から陽人戦の間に起きた「十常侍の乱」以降も、どうなったのでしょうか?「黄巾の乱」で活躍した何進とその妹は、なぜ十常侍の乱に関わっているのでしょうか?また、黄巾の乱は三国志演義ベースで紹介しています。


三国志・日本で一大ブームを引き起こした漢詩の原点は曹操にあり

三国志・日本で一大ブームを引き起こした漢詩の原点は曹操にあり

仏教文化が主流となっていた日本の文化に大きな変革をもたらすことになる「漢詩」。平安時代には朝廷を巻きこむような一大ブームとなります。その原点となるのが「曹操」の存在なのです。


https://sangokushirs.com/articles/196