劉備(玄徳)、黄巾賊のお供をする
■ 劉備(玄徳)、黄巾賊のお供をする
劉備(玄徳)、黄巾賊のお供をする
三国志の主役と言っても過言ではない劉備(玄徳)は清廉潔白というイメージが強いかもしれません。しかし序盤は特に何も持たないどこにでもいるような青年という感じで描かれています。序盤で母に茶を土産として持って帰ろうとした際、つい黄巾賊の悪口をつぶやいてしまいます。
それを運悪く黄巾賊の馬元義(ばげんぎ)に見つかってしまったのです。劉備(玄徳)は敵が少ないのをいいことに一時は「斬ってかかろうか」と思うのですが、「ここでこいつらを斬ったところで世の中が良くなるわけではない。それどころか自分が死んでしまう恐れがある」とのことで、「特にあなたたちの悪口を言っていたわけではなく、道が怖いから怖さを紛らわす為になんとなくつぶやいていただけです」といい難を逃れました。
さらにその後彼らの荷物持ちになってしまうのです。序盤過ぎてあまり印象に残らないシーンですが、長くはないにせよ黄巾賊のお供をしてしまうというなんとも情けない、そして機転を利かしたシーンには驚きです。
黄巾賊の存在があやふや
■ 黄巾賊の存在があやふや
黄巾賊の存在があやふや
黄巾賊の存在そのものが「え~!」という感じです。というのも彼らは張角の元、政府に対して反旗を翻すことを目的として作られた軍です。黄色い頭巾をかぶることから黄巾賊と呼ばれる訳ですが、政府の堕落さに不満が募ったいわゆる「いい奴ら」なのかと思いきや、彼らが通った後には食料が無くなる(簒奪してしまうため)というまさに「賊」だったのです。
そのため「政府が嫌だから彼らについていこう」という気にさせられないなんともあやふやな存在なのです。日本で言うと島原の乱を起こした天草四郎が鬼畜だったという所でしょうか(彼にはそういった悪い噂はあまり流れませんが)
劉備(玄徳)の母、息子の土産を捨てる
■ 劉備(玄徳)の母、息子の土産を捨てる
劉備(玄徳)の母、息子の土産を捨てる
吉川英治の三国志新装版では最初に劉備(玄徳)がお茶を買うシーンから始まります。当時のお茶はものすごく高価なもので「死ぬまでに一度飲んでみたい」というくらいの物でした。
そんな高価なお茶を劉備(玄徳)は母にお土産として持っていくのです。そしてそのお土産を目の当りにした母は「なんて孝行息子を授かったんだ」と言うのですが、いざ飲もうという時「このバカ息子が」と言ってお茶を投げ捨ててしまうのです。
その理由は命を助けてもらった張飛に家宝ともいえる剣を渡してしまったからです。「命助けてくれたんだからいいじゃん!」となるのが普通ですが、かなり怒られてしまいました。このシーンは「劉備(玄徳)の母親鬼畜じゃね?」と思う瞬間だったのです。
その他にも劉備(玄徳)の母親はちょくちょく出てきますがよく「え~?」って思わされますよ!
鶏を生で食べようとする張飛
■ 鶏を生で食べようとする張飛
鶏を生で食べようとする張飛
張飛が関羽に言い負かされて飲み屋に一人で入るシーンがあります。そこで酒を飲むわけですが、店主との会話が面白いのでニュアンスをご紹介します。
(足元に鶏がいるので)
「こいつは俺に食われたがっている」
「では毛をむしって丸焼揚げにしましょう」
「生でやろうと思っていたんだが」
「生で食べたら腹に虫が湧きますよ」
「馬鹿をいえ、鶏に寄生虫は棲んでおらん(でも揚げてくれたらありがたい)」
「お代を払えば揚げますよ」
「お代はない」
「冗談でしょ」
「本当だ。お代は関羽のところからもらって来い」
まるでコントのようなやり取りに張飛の横柄ぶりがうかがえる「え~」と思うシーンです。
通りすがりの者に馬をもらう劉備(玄徳)軍
■ 通りすがりの者に馬をもらう劉備(玄徳)軍
通りすがりの者に馬をもらう劉備(玄徳)軍
劉備(玄徳)が関羽、張飛と共に義勇軍を結成した時のことです。お金も武器も馬もない劉備達の前に張世平というものが通りがかります。張世平は馬を50頭ばかり引き連れていたのですが、関羽が、「我々はこういうもので、世をただそうとしている。だから馬をくれんか?」というのです。
いやいや無茶な注文だろと思いきやなんと張世平は「世のためになるなら」と言って関羽に50頭もの馬を挙げてしまうのです。しかもお金まで渡して「えらくなったら利息を付けて返してくれ」と言って引き揚げてしまうのでした。
今でいう住まいの無いの少年に家と食料を無償であげて「ボクシングの世界チャンピオンになったら返してくれたまえ」と言っているようなものです。こんなとんでもない話がふとわいてくるのが三国志の面白いところです。
張飛の暴れぶり慣れ切った関羽
■ 張飛の暴れぶり慣れ切った関羽
張飛の暴れぶり慣れ切った関羽
役人が義兄の劉備(玄徳)に対して汚名を塗り付けてしまったということで張飛はブチ切れてしまいます。そしていきなり役人に対して張飛は暴行を加えます。戦場に行ってもトップクラスの張飛からしてみれば役人なんて子供のようなものです。泣いて「やめてくれ、なんでも言う通りにしますから」という役人に対して「その手にはのらん」と言って半殺しにしてしまうほどです。
そしてそこに関羽が現れるのですが面白いのはここからです。
特に慌てる様子もなく「ちぇ、張飛の奴また持病を起こしたか」といって舌打ちして止めにかかります。
関羽が止めなければ役人は死んでいたというのにこの落ち着き様で、張飛の暴れぶりに慣れ切った関羽に「え~」と言ってしまいます。
劉備(玄徳)達をかくまう太っ腹すぎる劉恢(りゅうかい)
■ 劉備(玄徳)達をかくまう太っ腹すぎる劉恢(りゅうかい)
劉備(玄徳)達をかくまう太っ腹すぎる劉恢(りゅうかい)
張飛が役人を半殺しにするという大暴れによりお尋ね者になってしまった劉備(玄徳)達ですが、張飛の知り合いである地主の劉恢の元に匿ってもらうよう尋ねます。そして劉恢は酒ぐらいしかないけど1年でも2年でも遊んでくださいと言います。
1日や2日なら分かりますが、1年2年ってなんだよ!と思わず突っ込みたくなるシーンです。しかも張飛は長子に乗って「酒さえあれば何年でもいけますよ!」と同調してしまうのです。張飛は自分が役人を暴行したことでお尋ね者となっているという自覚が全く感じられず、「大丈夫か?」という感じでしょう。劉恢は劉恢で、なんでそんな太っ腹なんだよ!と思わされます。張飛と劉恢の人柄に思わず「え~?」と思ってしまうことでしょう!
まとめ
■ まとめ
まとめ
三国志の序盤、劉備(玄徳)はところどころで大物の片りんを見せるものの、何者でもないような状態です。そんな小隊のためより関羽と張飛の存在が大きく描き出されています。特に張飛の短気っぷりには毎度驚かされます。
その他にも「おいおいおい」とつい突っ込みたくなるところが多いです。吉川英治の三国志は歴史小説と言えどこういった表現がうまいので堅苦しくなくすらすら読めてしまいます!