①主役が勝者ではなかった
■ ①主役が勝者ではなかった
①主役が勝者ではなかった
三国志の主役は劉備(玄徳)です。日本人は古くから判官贔屓とも言われています。勝者よりも敗者にスポットライトを当てるのです。ズバリ、これに尽きるのではないでしょうか。
もしも、劉備(玄徳)が中国大陸を統一していたら、ここまでの人気を収めることはなかったでしょう。
また、三国志演義という物語が生まれていなかったかもしれません。そもそも中国で三国志演義が生まれたのも、時代の流れの中で蜀、並びに漢民族が虐げられていく中で、せめて講談の世界の中だけでもなんとかリベンジを…と、そのような気持ちから生まれたものです。
つまり、劉備(玄徳)が勝者となっていれば三国志は今とはまったく違ったものになっていたことでしょう。更にはその思いは劉備(玄徳)だけのものではないのです。仲間である関羽、張飛、諸葛亮。蜀の魅力ある武将たちのすべてが志半ばにしてこの世を去っていったのです。
これが日本人の琴線に触れたのでしょう。
圧倒的な勝者よりも、志半ばの敗者を好むのが日本人の国民感情。しかも蜀の武将たちは大儀を持って戦っていたのです。私利私欲ではなく、漢王朝の再興を求めていたものの、それが叶わずして結局はこの世を去る…。
この点が多くの読者からの支持を集めている大きな理由と言えるでしょう。勝者となって高笑いするのではなく、志半ばにしてこの世を去る…織田信長や坂本龍馬など、日本人に人気がある話に通ずるものがあるかもしれません。
②「3国」であったから
■ ②「3国」であったから
②「3国」であったから
三国志は魏・呉・蜀の三つの国の物語です。もしも魏と蜀の一騎打ちであれば、物語はどうしても単調なものになってしまっていたのではないでしょうか。
つまりは三つの国なので、魏と呉の戦いもあれば魏と蜀の戦い。そして蜀と呉の戦いもあれば、呉と蜀の連合軍と魏の戦い。
三つ国ということで絶妙のバランスを保てていたのでしょう。
常に単調にならず、展開が読めません。終盤でこそ呉と蜀は連携していたものの、劉備(玄徳)は最後には呉に戦いを挑んだものでした。
三つの国が独特のミリタリーバランスを保つ。
ある意味では傍観者と思われている呉でさえ、そこには様々なドラマが待っているのです。
「呉は何をしたかったんだ」という声もしばし耳にしますが、仮に魏と蜀しかなければ、単調な話になっていたか、あるいはもっと大味な話になってしまっていたかもしれません。
しかし呉がいたからこそ、どこかを攻めればどこかに攻められるという緊張感が存在したのです。「3」という奇数が織りなす物語だからこそ、三国志はここまで楽しいのではないでしょうか。
③短い期間だから
■ ③短い期間だから
③短い期間だから
三国志の話は、中身が濃い割りにはとても期間が短いお話です。三国志演義で言えば黄巾の乱から蜀滅亡。漫画「三国志」(横山光輝)は60巻刊行されていますが、100年にも満たない期間の話です。更に言えば、諸葛亮が没した234年以降はほとんど粗筋程度の展開でしかありません。つまり、単行本60巻で実質的には50年に満たない話となっているのです。
それだけ濃密な話だということが分かります。もしも三国時代がもっと長い期間のもので、ダラダラとしていたらどこかで飽きてしまう人が多かったかもしれません。
しかし三国志はいわば劉備(玄徳)、そして諸葛亮を主軸に於いていますので、話そのものが理解しやすく書かれています。
また、短期で濃密だからこそ、ついつい話に引き込まれるという人も多いのかもしれません。
おそらく漫画三国志を60巻読破したという三国志マニアは少なくはないでしょう。しかし苦労して堪らなかったという人はいないのではないでしょうか。
三国志好きの多くの人はどんどん先が気になり、もっと楽しみたいという気持ちになり、引き込まれ、読み終えたらさらにその事が知りたくなり、気付いた時にはもう三国志マニアになっていた。そのような人が大多数なのではないでしょうか。
④分かりやすい図式がある
■ ④分かりやすい図式がある
④分かりやすい図式がある
厳密に言えば決して曹操は悪人ではありませんが、それでも三国志は「善玉の劉備(玄徳)、悪役の曹操」という、ある種の分かりやすい図式が成り立っています。なので予備知識がなくとも読みやすいものとなっています。
また、誰かに説明する際も図式が明確なので説明しやすいという特徴もあるので、歴史が好きではない方でも難しく構えずに読み進めることができます。
もしも三国志が、最近の漫画のように難解複雑な展開で、話の至る所にフラグが隠されており、最初から最後まで気の抜けない展開で細かい部分にまで気を使っておかなければならないような展開では、読んでいる側としてもさすがに疲れてしまうに違いありません。
ですが三国志は基本的に「正義の劉備に悪役の曹操」という図式がしっかり成り立っていますので、歴史云々ではなく、一つの娯楽作品として分かりやすいのです。
難しい話であれば歴史マニアにとっては面白いものかもしれませんが、歴史にそこまで興味を持っていない人にとっては苦痛でしかありません。ですが実際には計略等で複雑に心情が絡み合う部分はあるものの、基本的には劉備(玄徳)と曹操、並びに蜀と魏の話であることはブレていません。
魏・呉・蜀の三国。それ以外にはあまり深く触れられていませんし、あくまでも三国に関係する話のみを展開していますので、いわば「余計な話」があまりないのです。そのため、誰にとっても分かりやすい作品として知れているのです。
まとめ
■ まとめ
まとめ
いかがでしたでしょうか。三国志がなぜ人気なのか、他にもいろいろと理由はあるでしょう。知れば知るほど奥が深い、懐の広い作品でもあるのですが、大きく分類すると先に挙げた4つが代表的な理由となるのではないでしょうか。
三国志は多くの人から愛されていますが、決して複雑怪奇ではなく、シンプルであり、さらに日本人好みの展開が繰り広げられているからこそ、多くの人を感動させたのでしょう。
三国志のメディア展開はまだまだ収まりません。関連の漫画、ゲーム、映画等多くの作品が誕生しています。
新しい作品が誕生しているだけに、今後も三国志人気が収まる気配はありませんね。三国志が好きな人はさらに、そうでなかった人は好きになるという影響力のある物語なのではないでしょうか。